海外赴任することになった経緯を教えてください。

2016年1月、人工知能技術に関する先端研究や商品開発に取り組むため、トヨタ自動車が北米に新しい研究所、Toyota Research Instituteを設立しました。立ち上げにあたり、研究員として本研究所からは4人が参加させていただくことになり、私がその1人となりました。当初はまだ人が少なく、特に我々が赴任したシリコンバレーオフィスは現地社員が数人しかいない状態でしたが、今では会社全体で100名を超える規模になりました。スタートアップ企業の誕生と成長の過程を内側から体験させていただいています。

赴任先での研究内容をご紹介ください。

自動運転をどこでも安心して利用できるようにするためには、世界中の詳細な地図を作成する必要があります。そこで、世界中の車が協力すれば、短期間で最新状態のデータを収集することができるのではないかと考えました。シンプルなセンサ構成で車両周辺の道路環境を計測し、これを共有して自動運転に役立てることができるよう研究を進めています。高度な安全機能が普及し、多くの車に搭載されるようになれば、交通事故の削減に大きく貢献できると期待しています。

仕事上で影響を受けたことはありますか。

紙の資料を見なくなりました。単にクラウド上の情報共有ツールを使用するという違いだけでなく、日本とは資料に対する本質的な考え方が異なると感じます。多くの場合、形式上の完璧さは目的ではなく、資料を通じて上司やチームメンバーと合意形成することを重視しています。草稿段階で関係者と共有してオンラインの資料上で議論を進めるため、資料ができ上がる頃には目的は達成しており、印刷の必要はありません。不完全な段階で共有し、素早く改善する方が良いという意識があらゆる面で浸透しており、本質的な作業に時間を割くことや、チームで研究・開発することを強く促進していると思います。