赴任の経緯と目的について教えてください。

当研究所の長期研究計画に合致し、かつ自らの専門知識を広げて成長できる赴任先を選びました。1カ月の短期グローバル研修でお世話になった先生を介したことで、スムーズに受け入れていただいたと思います。赴任先では、ナノメートル程度のスケールにおける水やアルコールなどの液体の流れについて研究しています。液体分離をはじめ、燃料電池で使われるフィルタや生内膜で起こっている現象を明らかにし、膜の新しい機能を発見することを狙いとしています。これまでに、近年注目を集めている酸化グラフェン膜に関する研究論文を出版しました。

海外の研究室で新鮮に感じたことは何ですか。

テーマ設定からまとめまでの「研究サイクル」を体験し、各フェーズでの力の入れどころやフェーズ間の移行のタイミングなど、研究を進める上で大切なことを多く学んでいます。研究室の定期ミーティングは、週一回ピザを食べながら、和気あいあいとした雰囲気でおこないます。ランチタイムでのミーティングには、時間の短縮という目的もあるようです。議論はとても活発で、納得するまで質問するというスタイル。定期ミーティング以外でも、日常的に研究室のホワイトボードの前でコーヒー片手に議論しています。

フランスでの生活に学ぶことはありますか。

フランスの事務手続きは手ごわいことで有名です。滞在許可書の発行・更新をはじめ、さまざまな場面で小さなトラブルに遭います。最初はイライラしていましたが、小さなトラブルくらいなら話のネタになると肩の力を抜いて受けとめるようにしたら、ずいぶん気持ちがラクになりました。家族帯同で赴任する場合は、しっかりと気配りすることも大切です。フランス赴任を通して、フランスと日本のそれぞれ良いところ、問題点を感じることができました。帰国後は、日本の環境に合わせて、フランスの習慣の良い点を実践していきたいと思います。