大学院時代との違いは、
社会のニーズを
感じられること。

私が学生時代から研究対象としてきたソフトマテリアルは、再生医療や液晶ディスプレイ、車の部品など、多岐にわたる用途展開が期待されています。この領域のアカデミックな研鑽と、製品化をめざした応用展開の両面から専門性を高めたいと、豊田中研への道を選びました。当研究所では、トヨタグループや、その先のお客様など、社会からのニーズを直接感じることができます。私の研究を必要としてくれる人が待っていると思うと、大学とは違うやりがいが感じられます。
昨年からは、グループ会社からの受託業務として、燃料電池材料への応用をめざした共同研究を進めています。専門家とのネットワークを築くために学会へ赴いたり、アメリカのNIST(アメリカ国立標準技術研究所)を訪ねて、日本にはない装置を使った実験を試みたりと、さまざまな経験を積むことができました。グループ会社の開発者の方たちとともに研究していて気づいたのは、私には自動車製造に関する知識がまだ足りないということです。研究所のなかにいるだけでは、日々進化している自動車部品の成り立ちが、なかなか想像できません。トヨタグループのコネクションを活かして工場を見学させてもらうなどして、学んでいるところです。

ディスカッションを重ねて、
一日の成果を
明日へつなげる毎日。

現在、私が所属しているスラリー特任研究室は、15人前後のメンバーで構成されています。そのなかで燃料電池とナノ解析技術、材料の専門家による6人のチームに所属しています。一人で実験することもあれば、共同でおこなうこともあるので、自分だけの視点で考察を進めないように気をつけています。
こちらの領域では常識でも、少しテリトリーが違えば認識が異なることもあります。きちんと違いに気を配って話す必要がありますが、普段から研究室は、ディスカッションがとても盛ん。コミュニケーションに苦労することはありません。
私が心掛けているのは、実験結果が出る度に他の研究者と議論すること。若手の私にとっては、ベテランの皆さんに議論を挑むイメージです。ディスカッションを基に、意外な可能性や見落としなどの指摘をもらい、次へつげています。1日のまとめの時間には、報告とともに次の実験の方向性も相談し、「じゃあ、明日は一緒に進めようか」と、話が展開することもあります。
入所当時は、自分の実験計画の未熟さを実感することもよくありました。他者の目を通したアドバイスや発想をいただける場があることは、とてもありがたいことです。

仕事と家庭を両立しながら、
研究者としての幅を広げていく。

プライベートでは、昨年、結婚しました。独身時代より家事の負担が大きくなったので、慣れるまでは苦労もありました。研究所には、働きながら出産や子育てをされている方がたくさんいらっしゃいます。アドバイスによると、先輩方は積極的に家庭内で家事のシェアをされている様子。私も見習って、もっと上手に仕事と家庭を両立していけるようにと奮闘中です。
そして、将来は同分野で活躍する世界中の研究者や技術者から認められることが目標です。第一線の研究者に弟子入りすることも視野に入れ、国内海外を問わずに、研究室の門を叩いてみたいと思っています。社外の研究者との共同研究も考えられますし、博士号取得をめざす可能性もあります。どのような道も、豊田中研では開かれています。
この研究所で、「女性だから無理」と感じたことはありません。チャンスを生かせるかどうかは、自分次第。自ら一歩を踏み出すことが大切です。就職活動時は、周りから、「修士では研究所への採用は難しい」と言われましたが、当研究所では、修士も採用していると、良い返事をもらいました。最初から自分の道を狭めてしまわないで、チャレンジしてみてほしいと思います。

ある日のスケジュール

TV会議は週に1回、共同研究を進めるグループ会社と、お互いの成果を報告しあう。帰宅後の楽しみであるSkype英会話は、研究に役立てられる会話力を磨こうとはじめた。1日に30分近く楽しむ海外の人とのおしゃべりは、いい息抜きにもなっている。費用には、自己啓発活動費用補助を役立てている。

※記事の内容は取材当時のものです。

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