将来の社会像を見極めて
今後必要とされる
技術を導き出す。

社会システム研究領域は、次の社会に求められる技術や、トヨタグループが次に取り組むべき事業は何かを考える部門です。多くの研究者は、自分の専門分野を中心に、その先をめざして研究を進めていく傾向があります。しかし本来は、社会が将来どのように変化するかを考え、ゆえに、こういう事業が必要になるだろうと判断して、取り組むべき研究テーマを探っていくべきではないでしょうか。
もともと、情報通信技術を専門に要素研究を進めてきた私は、2011年の発足と同時に社会システム研究領域に移籍しました。自分の研究領域を広げていきたいとの思いから、本来の専門分野とは大きく異なる領域で新しいスタートを切ったのです。
対象範囲が非常に幅広いため、最初はどこから手をつけたらよいか迷いましたが、専門に研究してきた情報処理の観点から、「情報のつながり」をコンセプトに、社会システム研究との接点を探しました。そして現在、グループ企業に利用いただく試作段階にまでこぎつけたのが、世の中の莫大な論文の情報の中から、将来の革新技術の兆候を予測できるシステムです。私の考案した、世界の膨大な文献情報の中から、これから大ブレイクする可能性の高い技術を萌芽期の段階で捉える手法がべースになっています。

トヨタグループの未来とは。
戦略シナリオを描く挑戦は
はじまったばかり。

もともとトヨタグループ各社からは、次にどの分野の技術開発に挑んでいくべきか? との相談を寄せられることが少なくありませんでした。その解答を提案することが、当研究所の使命であるトヨタグループ各社への貢献につながると考え、ソリューションの提供を主眼にしたのが、この社会システム研究領域です。
今後は、さらに研究対象を将来に見据え、トヨタグループが競争優位性を獲得するための技術戦略マネジメントへの貢献をめざしています。グループ企業が将来メインに据えるべき新事業を構想し、議論を重ねてシナリオを描いています。提案自体は、5年後、10年後になってみなければ正解かどうかはわかりません。将来、このテーマを選んでおいて良かったとグループ企業の皆さんから満足していただけるようにと努めています。
現在はまだコンセプトを固める過程にあり、今後の戦略を構想するために必要な地盤をつくっている段階です。私の考えでは、まず必要なのは、さまざまな分野の研究者や技術者を有機的につなげること。トヨタグループ内の幅広い人材をつなげられるように、あらゆる領域を広く視野に入れて把握できる人材を集めたいと検討を進めています。

運命に導かれて豊田中央研究所へ、
そして、マネジメント職へ。

私は、豊田中央研究所に不思議な縁を感じています。就職活動をちょうどスタートした頃、豊田中央研究所の研究者が、私が当時学んでいた大学の研究室を訪ねてきました。当時の教授がその方の博士論文の審査役を務めていたのです。そして、教授の勧めで、豊田中央研究所へ会社訪問することに。当時、自動車産業における情報通信分野といえば、車内でいかにハイビジョンのテレビ画像を楽しむかという程度でした。実際、私は自動車産業以外のメーカーも視野に入れて就職活動をしていました。ところが、研究所内を丁寧に案内してくれたその研究者の方は、「これからは、車同士の通信技術が絶対に必要となる時代だ。社内にはその専門家がいないから、ぜひ」と、熱心に入社を薦めてくれたのです。
入社して10年後。私は業務と並行して通信業務の分野で論文を書き溜め、当時の恩師のもとへ博士論文の審査をお願いして学位を取得しました。あの時、あの先輩研究者が研究室を訪ねたのと同じように…。学位を取得し、これからは情報通信という一つの要素技術だけでなく、様々な技術を総合的にシステムとして捉えることが重要であると考えて、私は社会システム研究領域へ移籍。現在はマネジメント職に就き、新たなステップに挑んでいます。すべての源は、あの出会いだったと思い返さずにはいられません。

1日のスケジュール

つい最近、社会システム研究領域の領域リーダに就任。自分で研究を手掛けることからは離れ、マネジメントに従事するように。組織を活性化し、皆が同じ方向を向いていけるように、仕事環境の整備に取り掛かっている。まだ慣れないことばかりだが、皆の手で成果を最大化できるようにサポートしていきたい。

※記事の内容は取材当時のものです。

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