ふとした瞬間のひらめきを
自ら試作して確かめる。
その手応えから得るもの。

弊社には、先駆的なテーマで世界のパイオニアになることを目指した、研究者提案型の「フロンティアテーマ提案制度」という制度があります。フロンティア研究テーマに採択されると、提案者はリーダーを任され、自らの研究グループを率いることができます。更に、フロンティア提案の予備検討を目的とした「プレフロンティアテーマ」という仕組みもあり、認められれば、テーマを業務の一部として実施することができます。
現在、私が電動機構研究室で進行している研究は、当初プレフロンティア研究として認められ、その後、フロンティア研究にはなりませんでしたが、正式に部の業務となりました。研究テーマは、従来の自動車の変速機とはまったく異なる新しい変速原理。この実現が可能になれば、変速機の体格の大幅な小型化や、ロボットなどのさまざまな分野に応用を見込むことができます。
現在は、試作の段階。複雑な設計製作は社内の専門部署へ依頼することもありますが、多くの試作を自らの手でおこなっています。気づきや難しさをダイレクトに体感できることが、自分で手掛ける利点です。試作の他にも、研究の進め方はある程度、個人にゆだねられています。この自由度の高さは、当研究所らしさでもあります。特に私は、「自由だね」「楽しそうだね」とコメントされることが多いので、輪をかけて自由なのかもしれません(笑)。

研究と同時進行で
ドクターコースの論文に
取り組む日々。

2年前から、業務と並行して大学のドクターコースに月3回ほど通い、大学時代と同じ研究室で、当時とは関係性こそ異なるものの恩師の指導を受けています。
試作を自らおこなう私の研究スタイルには、大学の修行時代が影響しています。当時は、振動切削という、工具を超音波で振動させながら加工をおこなうことによる生産性の向上について研究していました。現在の研究とは分野が異なりますが、振動に関する知識は、振動とは切っても切れない自動車分野でも大きな力となりますし、現在の研究のような新しいアイデアの創出にも一役買っています。現在の私の研究テーマは、誰が見ても新しい発明だと驚かれます。どういう経緯で思いついたのか、どこで思いついたのかと質問を受けることも少なくありません。どこで、に対する答えなら、「入浴時などリラックスしている時に、ふとひらめいて」に、なるでしょう。しかし、世の中で進行するさまざまな研究のなかでも、革新的なことを生み出すために大切なことは、本質を見極められるかどうか。物事を深堀りし、「なぜ?」と感じた時に、自分が知っている現象に置き換えて安心することなく、本質を捉えることを常に意識していることが大切だと考えています。

グループ企業の応援を得て
新しいモノづくりをめざす喜び。

研究プロセスのなかで、大きな喜びを感じるタイミングは3つあると思います。ひとつは、発明した時。もうひとつは理論がモノになって動いた時。3つ目は、製品化された時です。現在取り組んでいる研究においては2つ目までの感動を得たので、次は製品化することが目標になります。
製品化をめざす長い道のりを乗り越えるために心強い存在が、当研究所に在籍する、幅広いジャンルの研究者の存在です。異分野の技術と融合した新しい技術に踏み出す際に、相談できる人が研究所のどこかで見つけられる状況は、とても心強いものです。社内の人脈を辿っていけば、必ず専門知識を持っているプロフェッショナルに辿り着くことができます。専門家の指導をあおぎながら、必要な技術の提供を得て異分野間の共同研究につなげられる。当研究所ならではの環境です。
また、自分で生み出した新しい原理を育て、将来的に車に乗せて動かすプロセスまで、すべてに携われるという楽しみも、トヨタグループの研究機関である当研究所だから得られることでしょう。目新しい原理が生まれにくい機械の世界で、誰もが驚くような理論を見出して発表することで、生産現場に近いトヨタグループの人たちを含め、多くの方が驚き、応援してくれる環境にあることは、研究者として最高の幸せです。

※記事の内容は取材当時のものです。

ある日のスケジュール

午前中は、前日から流していた解析結果をチェックするなど「のんびり研究」にあて、午後から実験結果の整理や新たなシミュレーションモデル作成などの「ガッツリ研究」、アイデア創出や模型試作準備など「楽しい研究」は没頭してしまうため、遅くまで時間を取れる日に取り組む。妻も当研究所の社員なので、家事は完全に分担。毎日の朝食担当でもある。

※記事の内容は取材当時のものです。

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