研究職としての
採用があることに魅力を感じ、
豊田中央研究所へ。

大学院では「酸化物磁性体」の研究を行っていました。磁性体は、結晶構造中の原子配置が磁気特性と密接に関係します。私の研究では、添加する原子の種類や量による構造の変化をさまざまな手法で分析し、磁気特性との関係を調べていました。これらを一つひとつ紐解いていくのがおもしろく、熱中して取り組みました。
卒業後は世の中につながる技術に携わりたいと考え、豊田中央研究所に興味を持ちました。“研究職”としての採用があることに魅力を感じ、また、自分の研究テーマに関連した論文を読んだことがあったので入社後にスキルが活かせると考えました。
入社1年目では、新入社員研修の一環でトヨタ自動車の技術部に出向し、そこでリチウム二次電池の開発に携わりました。電気自動車の中核部品となるリチウム二次電池開発への強い使命を感じましたし、共同研究開発であっても、相手とは違う角度からのアプローチを行う豊田中央研究所への期待感もひしひしと感じました。
新入社員研修を終え、配属されたのもリチウム二次電池に関係する部署。大学時代の研究テーマとは違いましたが、学生時代に培った研究に向き合う姿勢や考え方は今の仕事にも活かされています。

性能の良いリチウム二次電池を
低コストで生み出すために。

自動車業界では現在、電動化に向けた競争が加速しています。その中でスラリー研究領域は、リチウム二次電池電極の生産プロセス技術の研究を通じて「性能の良い電池」を「低コストで生み出す」新技術の構築に取り組んでいます。
スラリーとは液体中に固体粒子が分散した状態のものを意味します。リチウム二次電池の電極は、このスラリーを基材の上に膜状に塗布し、加熱により液体を乾燥することで作製されます。
私たちの研究チームでは、液体を減らして粉に近い状態で電極を作製するという革新的なプロセスの実現をめざしています。このプロセスが確立できれば、溶媒を蒸発させるためのスペース縮小やエネルギー消費量の低減による大幅なコストダウンが期待できます。
チームは若手・中堅を中心とした8名。その中でも、私が一番の若手です。入社3年目までは、先輩方から企業の研究者としての仕事の仕方の基本を指導いただきました。4年目になり、まず自分で考え行動することを意識するようになりました。自分なりの答えを持つことで、より発展したアイデアや具体的なアドバイスをいただけるようになりました。

粉を制御することで、
性能も向上させるプロセスの実現を。

電極の生産プロセスにスラリーが長年用いられてきた理由は、流動性の高さと、扱いやすさの2点にあります。その一方、粉は舞い上がりやすくダマにもなりやすいため扱いが非常に難しく、電極を作製することは容易ではありません。
私たちのチームでは粉づくりに着目し、さまざまな可視化・分析技術を駆使しながら、粉の構造と特性を制御しようと日々奮闘しています。困難な課題だからこそ「実現できたらすごいぞ!」という強いモチベーションがあります。また、粉づくりは電池の性能とも密接に関係し、粉の作り方で電極の構造が変わり、電池性能に影響を与えます。大学の研究では材料の違いによる性能差を研究してきましたが、生産プロセスの違いによっても性能が変わることがとても興味深いです。「粉を制御することで、性能をも向上させるプロセスを実現したい!」とワクワクしながら日々の研究に向き合っています。
豊田中央研究所には、さまざまなバックグラウンドを持つ研究者が集まっていて、一人ひとり、物の見方や捉え方、研究への向き合い方に個性があります。一見気難しそうな方でも、話してみるとすごくフランクだったりします。研究についての議論の場はもちろん、雑談の中でも「そんな考え方があったのか!?」という新たな価値観に触れることができ、刺激をもらえる環境です。

ある日のスケジュール

実験がうまく進まない時は、あえて帰宅して気分をリフレッシュ。翌日には着実に気分や思考をクリアすることを心がけている。同じことをずっと続けてマンネリ化することがないようスケジューリングの工夫を行う。休憩時には同僚と話すことで気持ちを切り替えている。

※記事の内容は取材当時のものです。

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