電子顕微鏡の自動撮影や
AIを活用した分析手法の研究で
分析の研究分野に新しい風を。

私が所属する「クラウドインフォマティクス研究領域」では、AIやロボティクス、VRやネットワーク技術などを活用し、さまざまな研究開発現場における技術開発のプロセスを楽にしたり効率的にするといった、システムやサービスを生み出すための研究を進めています。そしてその研究成果を、新たなモビリティサービスの提案や、物流システム、スマートファクトリーの構築などへ活用することを目指しています。この研究の醍醐味は、さまざまな分野の研究者と協業しながら、トヨタグループの将来を担う製品のプロトタイプを創っていけるところにあります。
その中で私は、材料開発を行う分析者が目視では識別困難な微小な変化を自動的に抽出すると共に、分析の効率を飛躍的に高めるためのシステムの構築を目指しています。そのためには、走査型電子顕微鏡(SEM)から得られた大規模な画像データに基づく高度な分析手法に加えて、分析対象の試料を自動で撮影し、撮影された試料をクラウド上で観察できるシステムなど、材料開発における分析のプロセスを総合的にとらえたシステム研究が必要になります。
私は研究チームのLR(リーディングリサーチャー)として「何を?」「いつまでに?」「誰に提供するか?」の舵取り役を務め、そのロードマップを定めてメンバーに共有すると共に、材料分析の研究者とも議論をしながら研究を進めています。

研究者の困りごとを見つけ、
最適な解決方法を探り、
実現していく醍醐味。

学生時代は「遺伝的アルゴリズム」と呼ばれる最適化手法を用いた画像照合の研究を行っていましたが、研究者への道を進んでいる中で、豊田中央研究所で予防安全システムのセンシング技術に関する人材を募集していることを指導教官の先生から紹介していただきました。豊田中央研究所にはコンピュータビジョンに関する面白い成果がいくつもあったので、その一員となることでこれまでの経験を活かしながら自分も成長できそうだという予感がありました。
入社後は歩行者検出技術の研究を経て、予防安全システムや自動運転に関する業務に2021年まで従事しました。そこでは共同で研究開発を進めているトヨタグループの事業会社への出向も経験し、予防安全システムの実用化に関する開発に携わることもできました。実用化へのチャレンジは、かつてないプレッシャーを感じましたが、自身の研究成果が世に出る喜びは、何ものにも代えがたい自身の成長に繋がる貴重な経験でした。
2021年度から研究内容が大きく変わり、分析の効率化や高度化を進める役割となりました。分析分野の方たちとはそれまで何の接点もなかったので「正直どこから手を付ければいいんだろう?」と不安やとまどいもありましたが、この研究をきっかけに様々な研究者とのネットワークが広がり、楽しく進めることができています。
異分野の研究者の方々が「何に困っているのか?」「どんな点を自動化すれば効率化できるのか?」を見つけ出し、それをどんな方法で解決するのかを考え、実現していくところにやりがいを感じています。

チームリーダーとして
生み出す技術やプロダクトの価値を
最大化させられる人材に。

LR(リーディングリサーチャー)としては、2年ほど前からスクラム(世界で最も採用されているアジャイル開発プラクティス)を採用して研究を進めています。より価値の高い成果を生み出すために、2週間という短いサイクルでそのスプリント内での成果を確認するとともに、目標に対する現状を把握し、その差を埋めるための新しい手法の提案や改良を継続的に実施しています。また、技術や知識の属人性をできるだけ排除することで、すべてのメンバーがシステムのどのような部分にも携われるようなチーム作りも行っています。
「自動運転」と「電子顕微鏡の自動撮影や分析支援システム」はドメイン(活動領域)が全く異なるのですが、現在手がけているシステムはコンピュータビジョンやロボティクスといった自動運転で用いられる技術を使って構築しています。ドメインが大きく異なっても自分の持ち技が活かせる場所はたくさんあるのだなぁと、嬉しい驚きを感じています。
先日、研究所内のイベントで私たちの成果を紹介しながら研究時の困りごとや面倒に感じていることを募ると、多くの研究領域から10件もの相談が集まり、私たちの技術やノウハウを、さまざまな応用や研究分野とのコラボレーションに活かしていけるのではないかという可能性を強く感じました。研究者として論文や特許などのアウトプットを出すことも大事ですが、私たちが生み出す技術やシステム、プロダクトの価値を最大化させられる人材になりたいですね。

ある日のスケジュール

現在は在宅勤務*制度を活用しながら、育児と仕事を両立。豊田中央研究所はそれぞれのライフステージをお互いに理解し、協力し合う風土がある。人生のさまざまな段階で、その人にあった無理のない働き方ができる環境が整っている。

*フレックス勤務制度(「仕事と生活の調和」を目指す勤務形態)や在宅勤務(生産性向上・成果最大化を図るための勤務形態)を導入しています。また、育児・介護との両立支援の一環として、時短勤務制度もあります。

※記事の内容は取材当時のものです。

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